シンガポールにおけるインフルエンザの特徴と流行パターン

「インフルエンザ」と聞くと、日本では冬の風物詩のように思われがちですが、実はここシンガポールでは、まったく異なる形でインフルエンザが流行しています。
常夏のこの国では、年中ウイルスが活動しており、思わぬタイミングで感染してしまうことも。

この記事では、シンガポールにおけるインフルエンザの特徴や流行パターン、そして感染予防のために知っておきたいことを解説します。

目次

年中感染リスクがある熱帯のインフルエンザ

赤道直下に位置するシンガポールでは、1年を通して気温が高く、気候もほとんど変わりません。そのため、インフルエンザウイルスの活動も止まることがなく、季節性のはっきりした日本とは異なり、「1年中感染リスクがある」という点が大きな特徴です。

特に、感染のピークは年に2回あり、5月〜8月頃12月〜翌年3月頃に流行が見られる傾向があります。これは、世界中から人の行き来が多いシンガポールに、北半球と南半球それぞれのインフルエンザウイルスが時期をずらして持ち込まれるためです。

つまり、シンガポールでは「冬だから」「夏だから」という意識でインフルエンザ対策をするのではなく、「いつでもかかる可能性がある」という前提での備えが必要です。

北半球型・南半球型ワクチンとは?

北半球型ワクチン(Northern Hemisphere Vaccine)

・日本、アメリカ、ヨーロッパなど、冬にインフルエンザが流行する地域向け。
・9月〜12月頃に接種が開始され、年末〜翌年春にかけて流行します。

南半球型ワクチン(Southern Hemisphere Vaccine)

・オーストラリア、ニュージーランド、南米など、6月〜8月が冬になる地域。
・翌年3月以降に接種が開始されます。

ワクチンは年1回?年2回?接種タイミングの目安

インフルエンザのワクチンは、感染予防に最も効果的な手段のひとつです。ワクチンの効果は接種後2週間ほどで現れ、およそ3〜6ヶ月間持続します。

日本にいると「年に1回の接種」が一般的ですが、シンガポールでは年に2回の流行があるため、年に2回の接種を推奨するケースもあります。たとえば、5月前後に一度、年末年始にもう一度接種することで、流行のピークに合わせた予防が可能です。

また、日本への一時帰国や他国への旅行を予定している方は、出発の2週間前までに接種を済ませておくと安心です。インフルエンザワクチンは感染そのものを100%防ぐものではありませんが、かかったとしても重症化を防ぐ効果が高いことが知られています。

クーラーによる乾燥がウイルスの味方に

シンガポールでは、ショッピングモール、オフィス、公共交通機関など、どこへ行っても冷房が効いています。この冷房環境こそが、実はインフルエンザ感染を引き起こす要因の一つとなっています。

冷たい空気に長時間さらされることで、鼻や喉の粘膜が乾燥し、ウイルスに対する防御力が低下します。さらに、外の蒸し暑さと室内の冷えた空気の温度差が激しいことで体調が崩れやすく、免疫力の低下にもつながります。

冷房の効いた密閉空間に多くの人が集まることにより、ウイルスが空気中に拡散しやすくなるのも問題です。

また、冷房による空気の乾燥はウイルスに取っては長期間生存できる環境となります。「常夏の国だからインフルエンザにはかからない」という考えは大きな誤解であり、クーラーの効いた環境にこそ、感染リスクが潜んでいます。

特に注意が必要な人とは?

インフルエンザは誰でも感染する可能性がありますが、特に以下の方は重症化リスクが高いため、早めのワクチン接種が勧められます。

・6ヶ月以上の乳幼児
・65歳以上の高齢者
・妊婦
・持病を持つ方(喘息、糖尿病、心疾患など)
・免疫力が低下している方(治療中・服薬中の方など)

また、学校や職場など人が多く集まる場所にいる方や、小さなお子様がいる家庭では、家族全体での予防意識を高めることが重要です。

感染予防にできること

日常生活の中でも、インフルエンザを予防するためにできることはたくさんあります。
・室内では乾燥を避ける(加湿器の利用、濡れタオルの設置など)
・手洗い・うがいの徹底
・人混みではマスクを着用
・十分な睡眠とバランスの良い食事で免疫力を維持
・体調が悪いときは無理せず休む

また、症状が出た場合はなるべく早く医療機関を受診することが、自身の回復だけでなく周囲への感染拡大防止にもつながります。

まとめ

シンガポールにおいては、インフルエンザは決して「冬の病気」ではありません。年中活動するウイルスと、冷房による乾燥・寒暖差という環境要因により、誰もが感染するリスクを抱えています。
そのため、「予防の意識」と「正しい知識」がなによりも大切です。

ご自身やご家族の健康を守るために、ぜひこの機会にインフルエンザ対策を見直してみてください。

監修医師

古東 麻悠 (ことう まゆ)

順天堂大学医学部卒業。日本国内の総合病院で小児・新生児医療に従事。現在は、子どもたちの健康・教育に関わる企業の医療アドバイザーを実施。ライフワークは途上国での医療ボランティア、理念は「すべての子ども達に選択肢を」。2児の母。

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